フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『ローマの休日』を観た

 

ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版 (初回生産限定版) [DVD]

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ローマの休日

公開:1953年
監督:ウィリアム・ワイラー
脚本:イアン・マクレラン・ハンター、ダルトン・トランボ、ジョン・ダイトン
原案:ダルトン・トランボ
出演:オードリー・ヘプバーン
   グレゴリー・ペック

 

何だかんだちゃんと観るのは今回が初めて。とても面白かった。でも、想像していたのとけっこう違って驚いた。

まず、アン王女とジョーの出会いがイメージと違っていた。ふたりはもっと運命的な出会いをして一気に恋に落ちるのかと思ってけど、酔っぱらいの介抱がきっかけという全然ロマンチックなものではなかった(笑)。酔っ払ったアン王女とジョーのやり取りは、思わず綻んでしまうほどユーモアに満ちていて良かった。

バイクの二人乗りのシーンはけっこう有名だけど、ふたりが心から愛し合っている様を描いているわけではなかったのね。そもそもジョーがアン王女に付き合っているのは、スクープ、金目当てである。アン王女の場合は、純粋に好奇心からはしゃいでいる。

ふたりは互いに「嘘」をついている。ジョーはスクープ目当て、アン王女も「王女」という素性を隠している。この「嘘」を効果的・象徴的に利用したのが、「真実の口」のシーンだ。このシーンは、色んなところでパロディやオマージュとして飛び道具的に使われているけど、本来は作品のテーマにも関わる重要なシーンだったんだなと知った。

さらにこの「真実の口」が、のちのジョーの葛藤を描くシーンで活きてくる。アン王女はジョーに「親切な人」と言って感謝を告げるが、彼はウソを付いていることが後ろめたくて思わ視線をそらす。さらに追ってを振り切ったあと、ジョーは勢いでアン王女にキスをするが、そのあともすぐに顔を逸らしてしまう。最終的に、ふたりは互いの「嘘」にそれとなく感ずくが、はっきりと「嘘だった」と告白しないのは粋だった。

映画の冒頭、アン王女を「子ども」として描いていた。ミルクとクッキー、パジャマなどは「子ども」のメタファーである。しかし、アン王女が屋敷に戻ったとき、伯爵夫人はミルクを差し出そうとするが、アンは「もう必要ない」という。ジョーとの交流を経て、アンは「大人」へと成長を遂げたのだ。
観終わったあと、「これは『カリオストロの城』と同じだな」と思った。クラリスもルパンと出会うことによって、「少女」から「大人」へと成長を遂げた。クラリスとルパンのように、アンとジョーも結局は結ばれない。しかし、観終わったあと「切なさ」だけでなく、一種の喜びのような気持ちが残る。それは、少女たちが「大人」へと成長を遂げることができた、その決定的瞬間に立ち会うことが出来たからだ。