フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

新海誠 監督 『ほしのこえ』 レビュー

 

ほしのこえ [DVD]

ほしのこえ [DVD]

 

 『ほしのこえ

公開:2002年2月

監督・脚本・原案:新海誠

音楽:天門


新海誠作品は、『秒速5センチメートル』のみ見たことがある。高校の頃劇場で見てひどく感動した。
ワープや宇宙空間の断絶による他人とのすれ違いというテーマは、SFの古典的モチーフだ。『トップをねらえ!』の「ウラシマ効果」などがそうである。ざっくりと括ってしまうと「遠距離恋愛」であり、そういった意味で普遍的で共感できるテーマでもある。男と女の悲哀を描くという点では、『秒速5センチメートル』と共通している。ふと思いついたのだが、『秒速5センチメートル』で得た感動は、つい最近見た実写映画『アニーホール』と相通じるものがあると感じた。
やはり背景がとても美しかった。個人制作ということもあり、作画はお世辞にも良かったと言えないが、そのぶん背景がカバーしていた。ロボットの戦闘シーンは、個人制作にしては頑張っていると思う。
宇宙での多種族との戦争という壮大な物語世界を扱っていながら、美加子と昇――ふたりの関係性を描くことに終始している。このあたり、「セカイ系」の文脈を感じるところ。
ラストシーンでは、美加子と昇のモノローグが重なりあって、ふたりは時空を超えてつながっていると描写される。最期の「ここにいる」という台詞のこことはどこか? それは、「現在」ではなく、ふたりが一緒に過ごしたかけがえのないあの夏ではないだろうか。
本作を見て、なんとなく『千年女優』を思い出した。ふたりは純粋に互いに求め合っているのではなく、「キミのことが好きなボク」が好きで、一緒に過ごしたあの「風景」を懐かしんでいただけではないか。
個人制作でこのクオリティ、自分の世界観を見事に表現していたのは評価できる。また、「男と女の悲哀」を描くという、現在にも連なる新海誠の作風の核が垣間見えた。