フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『MEMORIES』を観た

 

 

『MEMORIES』
公開:1995年
製作総指揮:大友克洋
タイトルミュージック:石野卓球

大友克洋プロデュースの短編オムニバスアニメ『MEMORIES』を観た。過去に大友克洋の短編映画である『迷宮物語』『SHORT PEACE』を観たことがあったが、正直なところ「表現はすごいけどあんまり面白くは…」と感じていた。だけど、この『MEMORIES』は映像表現の凄さもさることながら、エンターテイメント性が高くて非常に面白かった! 過去、2作品と比べて突出した満足度である。

 

■『彼女の想いで』
原作:大友克洋
監督:森本晃司
脚本・設定:今敏
キャラクターデザイン・作画監督井上俊之
音楽:菅野よう子
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:スタジオ4℃

どの3作品も傑作なのだが、一番好きな作品はこの『彼女の想いで』だ。デブリ屋を主役とした作品ということで、まず『プラネテス』を連想した。宇宙空間や無重力の表現がリアリティがあってよかった。無重力から重力下に移行したときに登場人物が重力に耐え切れず膝を崩したりとか細かい描写がよかった。作画もきめ細かい。全体的に「リアリティ」を感じさせる映像表現を心がけていた。

描写はリアリティ重視にもかかわらず、非常に「オカルト」っぽい作品でもある。コンピューターによってそれぞれのキャラクターたちは幻覚を見せられる。虚実混交した語り口が特徴的だ。『パーフェクト・ブルー』や『パプリカ』もそうだが、こうした虚実混交とした語り口は、アニメと非常に親和性が高い。なぜなら、そもそも「アニメ」そのものが「虚構」だからだ。「なんか今敏作品っぽいアニメだなー」と思っていたが、クレジットで「脚本・設定:今敏」を見て納得!

大友克洋がインタビューで語っていたが、ホラーテイストもある。まずヒロイン(?)のエヴァそのものが幽霊っぽい。急に人形が飛び出してきたり、誰もいないのにピアノが勝手に演奏しだしたりもする。

主人公のハインツは、過去に娘を事故で失っておりそのトラウマを抱えていた。娘の死の克服/現実か思いでか? これらが「ドラマ」の主軸となっているのだが、インタビューによるとこれは原作ではなかったらしい。この脚色は大正解だ。やはり映画にドラマはあったほうがいい。

映画的な見どころもあってよかった。とくにハインツの家族の食事シーン、クライマックスシーンの作画は凄まじい。クライマックスシーンは、菅野よう子による音楽のパワーも加わりカタルシスを感じられた。

三部作の一発目ながら、「こんなにハードル上げちゃっても大丈夫なのか?」と正直驚いた。

 

■『最臭兵器』
原作・脚本・キャラクター原案:大友克洋
監督:岡村天斎
キャラクターデザイン・作画監督川崎博嗣
メカニックデザイン・メカニック作画監督仲盛文
音楽 - 三宅純
監修 - 川尻善昭
アニメーション制作 - マッドハウス

一作目が緊張感のある作品だっただけに、脳天気な歌が流れてきて、まず虚をつかれた感じ(笑)。エンターテイメントに振り切った作品で、「娯楽的な面白さ」でいうと本作がいちばんだった。

凡庸な男が国家規模の災害となるというシンプルな構造の物語。主人公のせいで人がバタバタと死んでいく。本来だったらシリアスになりがちなところを、ラテン系の音楽やユーモラスな語り口で、どこかコミカルな印象をもつ作品に仕上げていた。

自衛隊の戦車や航空機が活躍するシーンは、作画の力が凄かったり、ムチャクチャに弾丸やミサイルを飛ばしたりしていて、メチャクチャ気持ちがよかった。あれだけ攻撃されているのに、よく死なないのもおかしかった。

主人公がお馬鹿過ぎて、見ていてちょっとイライラした。普通の人間だったら自分が殺戮兵器になったことに堪えられなくなって、おかしくなっちゃうかもしれないけど、バカだから平気だったのか。

ラストは一件落着かと思ったものの……。でも、なんで信男があのスーツを着てあそこに登場したのか全然分からない(笑)。

インタビューで大友克洋が言っていたが、まさに最初から最後まで突っ走ったかのような作品だった。傑作である。

 

■『大砲の街』
監督・原作・脚本・キャラクター原案・美術 - 大友克洋
キャラクターデザイン・作画監督 - 小原秀一
音楽 - 長嶌寛幸
アニメーション制作 - スタジオ4℃

大砲の街に住むとある3人家族の日常を描い作品。「ドラマ」はほとんど無い。インタビューで大友が言っていたように、「世界観に浸る」ような作品だ。

まずは、不気味なキャラクターが印象的だ。どこかファンタジーっぽいキャラクターで、お話も寓意性を感じさせるものだった。共産主義的な社会のなかで、歯車のように扱われている人を見て少し「恐いな」と感じた。

終盤、子どもが父に「この国は何と戦っているの?」と聞く。父は「大人になれば分かる」という。解釈しがいのあるところだが、正直よくわからん!

真夜中、サイレンの音が響き渡るエンディングもどこか不気味さが漂うものだった。

ほかの2作品と比べると少し分が悪いなと感じた。もちろん、映像表現は凄いし、世界観も独特で、悪い作品ではないのだが。

 


『MEMORIES』と比べると、『SHORT PEACE』はやっぱり物足りないなー。