フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

短編オムニバスアニメ映画 『SHORT PEACE』 レビュー

 

 

公開:2013年7月

 

『九十九』、『火要鎮』、『GAMBO』、『武器よさらば』の4つの短編アニメで構成されたオムニバス形式のアニメ映画。大友克洋ありきでスタートした企画である。

ちょうど一週間前に、同じく大友克洋が携わった短編オムニバス形式のアニメ映画『迷宮物語』を見たのだが、それ比べると本作はちょっと見劣りしてしまう。尺が60分弱と少しボリュームも物足りなかった。

個人的な面白かったランキングは以下のとおり。『武器よさらば』、『火要鎮』、『GAMBO』、『九十九』。

 

■『九十九』

監督・脚本:森田修平

アカデミー賞・短編アニメーション部門・ノミネート作(受賞は逃した)。傘や織物など捨てられたモノが未練によって妖となり、それを旅の修繕屋のおかげで供養されるというシンプルなお話だった。民謡などにもある普遍的な物語でもある。

CGの動きが滑らかかつ手描きアニメ的なケレン味があって良かった。ベテランである山寺宏一の演技も安定感バツグンだった。

 

■『火要鎮

監督・脚本:大友克洋

『九十九』の1年前に、アカデミー賞・短編アニメーション部門にノミネートされていた本作。

映像表現としては、本作がいちばん面白かった。特徴的だったのは、絵巻のようなデザインの映像である。それを印象づけているのが、空から見下ろしたような俯瞰のレイアウトだ。ただ、心の葛藤など、ドラマを描くような場面では、キャラクターを真正面に捉えたパーソナルなショットとなっていた。

「恋人に会いたいがために火事を起こす」という物語は、どこかで聞いたことがあるなー…と思ったら、『ガラスの仮面』だと思いだした! 元ネタは「八百屋お七」というらしい。

火事のシーンは、大きな見せ場となっており、グッと惹きつけられた。火事の迫力もさることながら、何よりも「火消し」がカッコいい。

15分では、ドラマを描写するにはちょっと尺が足りなかったかなと。

 

■『GAMBO』

監督:安藤裕章

脚本:石井克人

「ガンボ」というタイトルから、おとぼけた内容だと推測していたのだが、意外とシリアスかつバイオレンスな内容で驚いた。

「少女を守るためにクマが体を張って鬼と戦う」というシンプルな物語ではあるが、4作のなかでいちばんドラマ性が強かった。「クマ頑張れ!」という気持ちで見ていた。クマと鬼との戦いは「プロレス」そのもの。ハラハラドキドキとさせてくれて、見ていて楽しかった。

鬼の隠れ家は小型の宇宙船のようで、SF的な要素も散りばめられていた。

 

■『武器よさらば』

監督・脚本:カトキハジメ

カトキハジメ

和風テイストが3作品もあるなか、本作はSF的な世界観を全面に押し出しており、良くも悪くも浮いていた。

見どころは、ハイクオリティな近未来の戦闘描写だ。パワードスーツや無人兵器など、SF的な面白さももちろんだが、純粋に「小隊もの」の戦闘として面白かった。TV版『攻殻機動隊』のようなイメージ。

 

4作品全体として見ると、どの作品もCG描写がとても素晴らしかった。ディズニーのフルアニメーション的な3D描写ではなく、手描きアニメ的な親しみがって、なおかつ動きの気持ちよさもちゃんとあった。