フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

アクションではなく、ヒルダのドラマに惹かれた 『太陽の王子 ホルスの大冒険』

 

太陽の王子 ホルスの大冒険 [Blu-ray]

太陽の王子 ホルスの大冒険 [Blu-ray]

 

 

先日、TSUTAYAディスカスに入会しました。入会した理由は「月額制だからいっぱい観ないと損」という心理を働かせるため。これから1日1本のペースで作品を鑑賞するつもりです。まずはじめに借りたのが、日本における長編アニメーションの金字塔『太陽の王子 ホルスの大冒険』です。

 

■ヒルダの圧倒的な存在感

序盤はTV漫画的なアクションでぐいぐ物語を引っ張っていく。狼との戦い、大カマスとの戦いなど、主人公・ホルスと敵との戦いで物語を引っ張っていく。作画も45年前のアニメとは思えないほど高水準で、まるでディズニーのようにヌルヌル動く。特に大カマスとの戦いのシーンでは、「水」の描写が印象的だった。

そうした「アクション」としての面白さもさることながら、本作の魅力はヒロイン「ヒルダ」の存在に尽きる。ヒルダは、悪の首領・グルンワルドの妹であり、「人間」と「悪魔」ふたつの心を持っており、そのジレンマに苦悩する。人間の生活に憧れつつも、悪魔の妹という生い立ちは覆せない。序盤はアクションを展開に中心してきたが、ヒルダが登場してからは、叙情的な雰囲気が大きく占め、心理描写やドラマで魅せていく。この辺りから、どんどん物語に引き込まれていった。ヒルダの「人間」と「悪魔」に苦悩する、微妙な表情の移り変わりを描いた大塚康生の作画も見どころのひとつだった。

キャラクターの複雑な心理描写を描いた『ホルス』。まさしく「子どもだけでなく大人も見れるアニメ映画」だと言える。

 その他雑感

  • 止め絵に違和感を感じた。ハーモニー処理といった撮影処理は一切せず、作画と色塗りが終わったあとのふつうのセル画を見せるだけ。この頃は止め絵の技術はまだ未整理だったのだろうか。
  • 悪役のグルンワルドは古典的な悪の首領。ショッカーやスーパー戦隊シリーズの悪者と同じで「地球から人類を滅ぼす」ことを目標にしている。いかにも子ども向けな部分。

むすび

「環境の違いや自身の生い立ちに苦悩する女」というモチーフは、同監督が手がけた『かぐや姫の物語』と一致している。このあたり〝高畑勲論〟としてちゃんと考察すると面白そう。