フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『コラテラル』 映画レビュー

 

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本作を観たのは、シド・フィールド著『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』でオススメされていたからです。

キャラの描写・プロットの展開・伏線など、脚本の構成がしっかりしていて非常に観やすかったです。

 

 題名の「コラテラル」は「巻き添え」を意味する言葉。トム・クルーズ演じる殺し屋・マックスの殺人計画に、ジェイミー・フォックス演じるタクシー運転手が不幸ながら巻き込まれていく。ジャンルとしては「アクション・サスペンス」。ふたりの対立・葛藤を軸に物語が進んでいく。

 マックスとヴィンセントはまったく異なる価値観を持って生きている。ヴィンセントは、人の命・人生は宇宙のあまたある星のように無価値なモノだと言う。だから人を殺しても気にも留めない。一方のマックスは、高級リムジン会社を運営したいと口先で夢を語りながらも、「タクシーの運転手」という立場に居座っている。「やるやる」と言いながらも、具体的な行動に移さない男だ。

  一見正反対の両者だが、両者には似た一面がある。ヴィンセントはマックスのことを「お前は夢を語っているだけで実行するつもりはない。安易な生活に妥協している」と批判する。しかし、その言葉はそっくりそのまま自分自身に跳ね返ってくる。家庭環境の貧しさによって、殺し屋の世界へ誘われたヴィンセント。どうも彼は嫌々……とまでは言い過ぎだが、妥協で殺し屋をしているように見える。ラストシーンの彼の「これは仕事だ!」というセリフが示唆的だ。

  物語が始まってから終始受動的なマックスだったが、愛する女を守るためにヴィンセントに反旗を翻す。彼はついに自分の意志で行動を起こしたのだ。成長したマックスに対し、殺し屋であり続けたヴィンセント。彼はラストシーンで、マックスに撃たれ瀕死状態になる。でもその表情はどこか満足気に見える。マックスの中に自分と似たモノを見つけ、それが克服されたことを認めたからだろう。

 

町山のブログに本作のレビューがあったので紹介する。

白髪頭のトム・クルーズ(42歳) - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記

「トムクルは現実の人間ではなく、フォックスと正反対の人格の象徴であり、同時にフォックスの潜在意識に隠されたダークサイド、ドッペルゲンガーである。

彼と出会うことでフォックスは現実から逃げてきた人生に気づき、戦いを始めるのだ。

つまりファウストメフィストフェレスの話ですな。」

 

 

あながち間違った見方はしていないようでホッとしました。

脚本に関しては、リアリズムの観点で「穴だらけのプロット」と低評価をくだしています。

でも映画は「フィクション」、現実では起こりえないことを作劇として描くもの。

だから、面白ければそれでいいのです!

 

むすび

どんどん物語が前にころがって行く快感があって「アクション・サスペンス」としては満足な出来でした。トム・クルーズ演じるヴィンセントもアジのあるキャラクターで魅力的。ラストシーンで死んで悲しかった(小並感)。