映画レビュー『ショーシャンクの空に』
本作を観ようと思ったきっかけは、『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』でその脚本がベタ褒めされていたからです。予習をかねてちょっと調べてみたら、非常にポピュラーな作品で、「人気作品ベスト100」みたいなランキングではいつも上位にくるとか。とことん映画には疎いので、不明を恥じるばかりです。
視聴して、「ああ、これは人気があるはずだ」と納得。とても感動的でした。
ジャンル分けをしてしまうと「ムショもの」「脱獄もの」になります。主人公のアンディは、浮気をした妻と間男を殺したという冤罪で刑務所に送られ、囚人から暴行を受たり、刑務官にコキ使われます。このジャンルでこれらが描かれるのは基本ですが、特徴的なのは、陥れた奴に復讐することや、脱獄することがドラマの目的ではないこと。もちろん、アンディは穴を掘り続け脱獄を果たしましたが、彼の行動により周りの囚人に「希望」が与えられていくさまを丁寧に描いていました。
ドラマの王道は、主人公の成長を描くことですが、本作のアンディはそこまで成長しません。というのも、初めから彼は「希望」を持っているからです。むしろ本作は、レッドの成長物語と捉えることが出来ます。レッドは、アンディとの交流を経て、出所後もブリンクのように自殺を選ぶことなく、「一生懸命生きこと」を選びました。
良かった・感動したシーンは、アンディがモーツァルトのレコードをかけるところ、脱獄して空を仰ぎ見るところ、アンディとレッドが再開するラストシーン。その3つです。
本作の何が良いって、やっぱりあのラストシーンでしょう。本作の映像表現に関して、色味がかなり重々しく暗めに調整されています。その対比があって、ラストシーンの太平洋の青く美しいさまが、より際立っていました。
映画評論家・町山智浩のレビューがあったのでメモ。
町山智浩の映画塾!「ショーシャンクの空に」<復習編>より
・原作は非常に長い。何でも無いシーンが伏線になっていたりと、上手く再構成している。
・監督は、あのエンディングを望んでいなかった。リアリスティックな悲劇的なエンディングの予定だったが、プロデューサーの要望で変更した。
・脱獄後、アンディが空を仰ぎ手を広げるのは『暴力脱獄』のオマージュ。
・アンディはキリストの象徴。
・「映画」は「音楽」と同じで、べつに無くても生きていける。でも、あったほうが人生は潤う。
・穴を掘り続けば何かを突破できるかもしれない。サラリーマンしながら小説を書くとか。人それぞれ穴を掘り続けば何かが得られる。フランク監督にとっては、ホラー映画を撮り続けること。
意外だったのは、あのラストシーンは監督の意向でつくられたのではないということ。ちょっとガッカリな反面、そうした偶然性によって映画は成り立っているんだなと再認しました。
むすび
本作は「刑務所」を舞台にした物語ということもあり、全体の雰囲気は重々しく、また緊張感があります。しかし、そのプレッシャーが一気に開放されるラストシーンのカタルシスたるや。映画らしく、観終わったあと「また頑張ろう!」という気持ちにさせてくれる作品です。