『男たちの挽歌』を観た
ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』を観た。これまでアメリカ映画、日本映画しか観てこなっただけに、新鮮な感じだった。もちろん、ジョン・ウー監督作を観るのも初めてである。
なお、観ようと思ったきっかけは、虚淵玄や倉田英之が好きな映画として挙げていたからだ。
極道から足を洗いたい主人公ホーと、その弟であり警官であるホーとの衝突がドラマのメインになっている。
「入るのは簡単だが、抜け出すのは難しい」
ホーが務める会社の社長が言うセリフが、「極道」の世界を端的に表現している。足を洗いたいけど組織がそれを許さない……こういったテーマは、日本のヤクザ映画とまったく同じであり、その影響を強く感じる部分だ。
銃撃アクションが甚だカッコよかった。とくにマークがホーの報復のために、単身で裏切り者に乗り込むシーンが最高だ。何と言っても二丁拳銃は男のロマンである。映像表現的にもスローモーションを使って、劇的な感じを上手く出していた。
映画の冒頭は、けっこう無邪気な感じで微笑ましい。ホーとマークのふざけ合いは、「バディ感」がよく出ててよかった。ホーとその弟キットとのじゃれ合いもおかしかった。
こういった前半部のユーモラスさが、のちの「シリアス」を浮彫りにしていた。個人的には、シリアス部分よりも、こういったユーモアな部分に惹かれた。
音楽がいい感じに「臭く」てよかった。80年末期~90年代初頭の懐かしさを感じさせる電子音楽だった。イメージとしては、『仮面ライダーBLACK』っぽい感じ。川村栄二を彷彿とするような音楽だった。
映画のクライマックスは、港でのホーとマークVSシン率いる組織となっている。窮地に陥るホーとマーク……そこに弟キットが登場。初めは兄に反感を抱いていたキットであったが、自らの危機を救ってくれた兄と共闘することになる。
ホーとキットの「邂逅」がセリフを介さずに、アクションだけで語られるのが良い。どんな感動的な一幕でも、言葉にしてしまうと案外安っぽくなってしまうことがある。この兄弟は言葉を交わさずに、銃撃によってのみ自分の意思を表現する。このあたり渋いところである。