フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『用心棒』を観た

 

用心棒 [Blu-ray]

用心棒 [Blu-ray]

 

 

公開:1961年
監督:黒澤明
脚本:黒澤明菊島隆三
音楽:佐藤勝
撮影:宮川一夫・斉藤孝雄

 

黒澤明監督の『用心棒』を観た。黒澤明作品を観たのは4年ぶりくらい。だいたい5作品目くらいにあたる。
傑作と言われているから期待して観た。率直な感想としては「こんなものか」という感じ。決してつまらなかったわけではない。ハードルが高すぎたのだ。

 

ふたつのヤクザ組が抗争を繰り広げる町を舞台に、三船敏郎扮する三十郎の活躍を描く。
予想していた内容をだいぶ違っていた。『用心棒』というタイトルから、主人公は人情派の「正義の味方」で、「悪」を滅ぼすべく奮闘する話かと想像していた。
三十郎はしたたかな性格でステレオタイプな「ヒーロー」ではなかった。ヤクザ勢力から金を巻き上げるために策謀を巡らせているのが印象的だった。こういう斜に構えようなヒーローは今では決して珍しくはない。ただ、当時としてはけっこう斬新だったのかもしれない。

でも、身売りにされてしまった女を助けるなど人情的な側面も持っている。このあたり「ツンデレ」あるいや「ヤンキー」キャラっぽい。

三十郎の初戦闘シーンにおいて、敵の腕がバサッと落ちるショットが印象的だった。明確なバイオレンス描写である。昔の日本映画のなかでは、比較的珍しい。

「傑作」と言われるほどの評価に対して、意外と地味な作品だと感じた。時代劇ではあるが、殺陣も派手なものではない。どちらかというと「リアル」寄りな殺陣である。私的には、「リアル」よりも、見得やケレン味がある殺陣のほうが好き。
構成的にもカタルシスを感じられるほどの、大仕掛な見せ場はなかった。

 

 

町山智浩の映画塾!「用心棒」』視聴メモ


町山智浩の映画塾!「用心棒」<復習編> - YouTube

 

・小説『血の収穫』にインスパイアされた。『荒野の用心棒』につながった。
ポイントは動物。犬、馬、うさぎ、など。黒澤明は象徴的に映画を撮る監督。
・犬が手首を横切るシーンは、デヴィッド・リンチ監督作『ワイルド・アット・ハート』でオマージュされた。
・コメディ、アクション、シュールリアリスティック、いろんな要素が入っている。
・時代設定は1860年代。スミス&ウェッソンが初めて薬莢をシリンダーに入れて撃つ拳銃をつくった。坂本龍馬が愛用した。時代考証がちゃんとしている。
・ユーモアとアクションのバランスがいい。「笑わせる、怖がらせる」をちゃんとやっている。最近の映画はやってない。
・動物の名前がキャラクターの名前に入っている。アニメの世界。主人公は犬。
・音楽は佐藤勝。時代劇っぽくない。マンボっぽい。ヘンリー・マンシーニに似ている。わざとやっている。
・人を斬るときの音。鶏肉を加工したものをたたっ斬った。『椿三十郎』で効果音がもっと派手に。以降、時代劇はどんどん派手になってくる。黒澤が金字塔。『プライベート・ライアン』にも影響を与えた。弾丸が人を破壊する音。黒澤イズムを引き継いでいる。
・「家紋」。スターウォーズの帝国軍のマークに影響を与えた。ジョージ・ルーカスは黒澤ファン。
・いろんな映画の元になっている。