フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『ももへの手紙』を観た

 

 

監督・脚本・原案:沖浦啓之
キャラクターデザイン・作画監督:安藤雅司
音楽:窪田ミナ
作画:井上俊之、井上鋭、本田雄西尾鉄也

 

沖浦啓之監督の『ももへの手紙』を視聴した。沖浦監督のイメージとしては、リアルな作画が凄いスーパーアニメーター、「『人狼』の監督」というのがある。
正直なところ、あまり期待はしていなかった。実際観た感想としても、「そこそこ」といった感じ。

本作は、主人公宮浦ももの成長を描いたジュブナイルである。
主人公の宮浦ももは、父と死別していた。しかも、酷い暴言を吐いたまま。そのことを深く後悔しており、それがドラマ、葛藤の生成源にもなっている。
ももの母いく子も気丈に振る舞ってはいるが、内心では夫の死に深い悲しみを抱いてた。そんな母の気持ちをつゆ知らず、ももは母に対しても、かつての父と同じく暴言を吐いてしまう……。

映画のクライマックスは、病がぶり返した母を救うため、ももが医者を呼びに隣町に向かうシーンである。ここの映像は、アニメ的なケレン味抜群で気持ちよかった。とくに妖怪の集合体の迫力は凄まじかった。

ただ、全体的に冗長な映画であった。尺はちょうど2時間あったが、1時間半ぐらいがちょうど良い気がする。
また映画の目的が分からないまま進むため、なんとなく宙ぶらりんな感じがした。
全体的にシナリオがちょっと微妙だったかなと。

作画に関しては、沖浦啓之が監督ということもあり、リアルかつ丁寧な芝居でよかった。作画オタクも充分満足できる内容なのではないだろうか。
リアルな芝居よりも、オーバーアクションなギャグ風の芝居が気に入った。もものリアクションは、赤塚不二夫作品にありそうなポーズで愉快だった。手紙を展開へと送るための踊りのシーンもユーモラスでよかった。

声優に関して。もも役の美山加恋と、その母親いく子を演じる優香は、本来声優ではない。でも、生っぽい声がリアル寄りの作画と上手く調和していた。
3人の妖怪を演じたベテラン役者――西田敏行山寺宏一、チョーが作品世界を底支えしていた。西田敏行は声優が本職ではないが、ひじょうに良い芝居をしていた。

先述したとおり、本作はももの成長を描いたジュブナイルである。その「成長」を象徴していたのが「飛び降り」である。エンディングで、ももは初めて飛び降りに成功する。ももは成長したのだ。
本作は少女の成長を真摯に描いた映画であった。そのあたり評価は高い。