フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

川尻善昭監督 『妖獣都市』 レビュー

 

妖獣都市 SPECIAL EDITION [DVD]

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1987年

監督・キャラクターデザイン・作画監督川尻善昭

原作:菊地秀行

脚本:長田紀生

 

川尻善昭監督作は、『走る男』と『吸血鬼ハンターD』を見たことがあった。だから、他の作品同様にスタイリッシュな画で、エロとバイオレンスな物語が展開されるんだろうな、と予想していた。

大方その予想はあたっていたが、想像以上に今回は「エロ」の部分が強かった。アニメでは珍しいモロのセックスシーンが度々登場しているのである。爺さんのソープでのマットプレイもあって驚いた。その他にもセックスをメタファーとする表現が、各所に散りばめられていた。

本作は、「人間」と「魔族」の対立を描いた作品だ。そのためか、登場する女性キャラクターは、全員魔族である。そのどれもが妙なエロティシズムを感じさせる存在だった。特に印象に残っているのは、クモ女。女性器からクモの糸を発射するインパクトたるや。

ヒロインの麻紀絵も魔族の女で、浮世離れした雰囲気を持っていて非常に魅力的なキャラクターだった。雪のような白い肌、儚げな表情が妙にそそる。声優の藤田淑子の声も艷があって良かった。近年の萌えな女性キャラにはない、アダルトな女性の魅力があった。

また、ほかの川尻善昭作品同様、アクション・シーンが素晴らしかった。スタイリッシュなカット割り、2コマ打ちでぬるぬる動く作画、ケレン味のある殺陣がよかった。個人的には、序盤の空港での格闘戦が一番気に入っている。

私が本作で惹かれたのは、「ハードボイルド」と「ロマンス」――一見相反するふたつの要素である。物語は、基本的にハードボイルドで進行していくが、終盤からロマンスの方に大きく振れていく。特にラスト滝蓮三郎と麻紀絵が結ばれるくだりは、非常に情緒的である。「ハードボイルド」を基調としているからこそ、その中での「ロマンス」がより際立っていた。

本作を見て、改めて日本のアニメにおける川尻善昭の異質性を再認した。こういうアダルトでハードボイルドなアニメは、ここ最近ほとんど見られない。川尻善昭にまた監督を務めてほしいなと願う。これだけ完璧に作品の世界観をコントロール出来る手腕はすごいと思うので。