フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

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■デス・ビリヤード

レンタルで『デス・ビリヤード』を視聴。本作は、2013年の若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ2013」で制作されたアニメだ。今期放送開始されたマッドハウスのオリジナルアニメ『デス・パレード』の基となった作品で、予習として視聴した。率直な感想としては、非常に面白かったし、満足でした。

前評判として「人間の深層心理に迫る描写」「結末が分からないリドル・ストーリー」など、何となく“尖った作品なのかな?”と予想していた。たしかに表層面を見ればその通り。
たしかにエッジの利いた作品ではあるが、作品としての魅力はそんな表層的なことではない。真の魅力は、エンターテインメントとしてはとてもシンプル。「生きる勇気を与えてくれる」ということだ。

作中、印象的に度々登場したフレーズに「不公平」があった。我々が生きている現実世界も不公平に満ちている。そういった意味で『デス・パレード』は、現実世界の縮図というか、不公平を凝縮した世界であると言える。それだけに感情移入度合いが凄まじい。
若者と老人は、天国と地獄行きをかけてビリヤード対決をするが、実力差は明白で、本来であれば老人の勝利がしていた。こういった不公平は、我々が生きている現実世界とまったく同じ。そんな不公平な状況を打ち破るべく若者は老人を殺そうとする。たしかに「殺人」そのものは悪い行為である。だが、もし自分が彼の立場だったらどうだろうか。不公平のなかでつねに苦悩しもがき続けるのは、彼だけでなく現実世界の我々も同じである。

そしてラストで若者は、不公平でもあがき続けることこそ人間だ(うろ覚え)的なセリフを言う。エンターテインメントとしては、めちゃくちゃストレートなメッセージである。
TVシリーズの続編が企画・制作されたということは、作品が観客の胸に響く何かを持っていたということだ。それは、「生きる勇気を与えてくれる」という極めてストレートな要素ではないだろうか。