フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

『ピンポン』 最終回によせて

 

 

素晴らしいの一言。あまりの出来に終止ニヤニヤが止まらなかったな。

 

『ピンポン』という作品を初めて触れたのは、2002年の実写映画が初めて。たしか中学に上がる前くらいに観てドハマりした。『ピンポン』に影響されて卓球部に入ったくらいである。当時はスマイルに感情移入して観ていたような気がする。あとになって、原作マンガも購入して読んだけど、映画版のほうが気に入っていた。

 

自分としてはけっこう思い入れ深いこの『ピンポン』。アニメ化になると聞いたときは、期待半分、怖さ半分という感じだった。やはり好きな作品だけに微妙だったら嫌だな……という気持ちがあった。でも、実際に放映を観て、それは杞憂だったことがわかった。もうメチャクチャ面白い! 原作のリスペクトに溢れており、内容やカット割りもマンガ版を踏襲している。
だが、最も良かったのは、「脚色」部分だ。おのおののキャラクターの根幹は同じなんだけど、より人間的な厚みを膨らませていた感じがあった。とくに印象的だったのはチャイナだ。正直、映画版やマンガ版では、このチャイナには魅力はあまり感じられなかった。だが、アニメ版では、母親のエピソードを挿入したり、指導する生徒との交流を描くことで人間的な厚みが出ていた。
 昔はスマイルやペコに感情移入して観ていたんだけど、歳を重ねてくると、やはりチャイナやアクマに感情移入して観てしまう。彼らと同じく自分も「挫折」を味わってきたからだ。もう少し歳を重ねると、風間やコーチ、オババあたりに感情移入できるのかもしれない。そういった意味で、この『ピンポン』は誰かしらに共感できるつくりになっている。観る人によって味わいが変わってくる。

 

アニメ版における演出面で印象的だったのは「画面分割」だ。この演出法は、その名の通り画面をマンガのコマ割のように分割する演出法だ。画面分割といえば出崎統が有名だが、それとはちょっと違った印象を受けた。この画面分割によって、「スタイリッシュ」な感じが出ていた。だが、影響はそうした映像的なカッコよさだけに及ばず、「本作は群像劇なんだ」という印象づけをしていた。
もともと本作はペコとスマイルの関係性が主軸になっているが、周囲のキャラクターもきちんと描かれている。先述したとおり、どのキャラクターにも共感できるようにもなっている。「主人公はコイツで、コイツはこういうことを目標にしている」とか「コイツの成長を描く」という作品ではない。それぞれの人間にそれぞれのドラマがある。この『ピンポン』は、卓球に関わるそれぞれの人間模様全体を映す作品なのではないか。

 

全体的なアニメ版の感想としては、120点くらいの出来てで、「湯浅さん本当にありがとうございます!」という感じ。ここまでアニメで心を揺さぶられたのは『グレンラガン』以来だ。Blu-ray BOXも買おうか迷っている。あと1万円安かったら迷わず買ってるんだけどなー。どうしよう……。

 

その他雑感
ツイッター、ライン、ルンバなど、現代的なアレンジが目立った。古びた印象がなく、「今風」な感じに。
・「アニメ化」というよりも「リメイク」という印象がある。現代的なアレンジや脚色も多かったから。
・キャスティングには満足している。とくにコーチ、オババがよかった。
・クリスマスの回と最終回が特に良かった。