フリントは風に舞う。

アニメ語りメイン。出崎、富野好き。実写は目下勉強中。

マイケル・アリアス監督 『鉄コン筋クリート』 レビュー

 

 公開日:2006年12月23

原作:松本大洋

監督:マイケル・アリアス

演出:安藤裕章

脚本:Anthony Weintraub

総作画監督・キャラクターデザイン:西見祥示郎

松本大洋の独特な世界観を、見事に映像化したアニメ映画だった。映像の方向性としては、湯浅政明に近い。

「ファンタジー」と「生々しさ」、このふたつが妙なバランスで共存していた。「ファンタジー」な要素は、マンガ的/二次元的なキャラクターデザイン、ピョンピョン跳ね回る子どもたちの非現実的な運動、寓意的なテーマなど。「生々しさ」の要素は、痛々しい暴力、昭和の町並みを感じさせる物語世界、声優が本職ではないシロとクロの役者など。

キャストに関して、クロ役は二宮和也、シロ役は蒼井優が演じていた。ふたりとも声優が本職ではない。本作に限らず、声優が本職ではない、たとえばタレントや実写俳優がアニメの声優を務めると、その演技には「生っぽさ」が生じる。それがアニメ作品の魅力を損なうこともしばしばある。しかし、本作ではその「生っぽさ」が物語の世界観や、描くべきモチーフと呼応して、プラスに働いていた。良い例えか分からないが、押井守作品の竹中直人のような感じだ。

物語の大きなテーマは、シロとクロの寓意的な関係性だ。クロが太極図がプリントされた服を着ていたのが示唆するように、「ふたりでひとり」的なことだ。こうした対になったキャラクター配置は、同じく松本大洋作『ピンポン』のペコとスマイルに通じるものがある。

ギャング・ヤクザ絡みの抗争を物語の根幹としながらも、シロとクロの関係性の中で、寓意的なものを描く。これも「生々しさ」と「ファンタジー」の共存だなー。

アクションシーンは、アニメならではの動きの気持ちよさがあって素晴らしかった。とくに、イタチが活躍するシーンは、非常に暴力的なんだけど、カッコよさと気持ちよさに満ち溢れていた。